更に効率の高い株を作成
窒素固定活性の高い野生株を選抜し、そのヒドロゲナーゼ遺伝子を破壊することにより、 水素生産活性をさらに向上させることが可能
Nostoc sp. PCC 7422 改良株作成の方法
- ニトロゲナーゼ活性の高いシアノバクテリア株の選抜
- ヒドロゲナーゼ遺伝子の塩基配列解明
- ヒドロゲナーゼ遺伝子の分断破壊
- 水素生産活性上昇の確認
水素生産は光合成とニトロゲナーゼ活性に依存しています。
そこで、世界の学術研究所が保有している13種のシアノバクテリア株について、 光合成に伴うニトロゲナーゼ活性を測定し、その中で活性が最も高かったNostocc sp. PCC 7422株を選抜しました。 次に、この株の取り込み型ヒドロゲナーゼhup遺伝子クラスター、 及び双方向性ヒドロゲナーゼhox遺伝子クラスターの塩基配列を明らかにしました。
得られた遺伝子情報を基に、hupL遺伝子を破壊した変異株を作成し、その諸性質を調べました。 その結果、変異株は水を電子供与体として、水素と酸素を数日間にわたって発生し、 水素を濃度約30%(体積百分率)に蓄積することができることを明らかにしました。 (なお、この株の双方向性ヒドロゲナーゼ活性はほとんどゼロでしたが、hox遺伝子に変異が入っていることが、 その原因だと考えられます)
7日間にわたる実験では、水素生産のエネルギー変換効率が3.7%(対可視光))という高い値が得られました。 地表で受ける全太陽光エネルギーのうち光合成に利用できる可視光の割合は約45%なので、 この値は全太陽光に対する効率約1.7%に相当するものです。
この研究により、シアノバクテリアによる水素生産性を高めるためには、 有望な野生株の選抜が有効な方法であることを明らかにしました。
14種の窒素固定型シアノバクテリア株のニトロゲナーゼ活性の強さ、および2種類のヒドロゲナーゼの分布
選抜株の遺伝子工学的改変
(参考文献 Yoshino et al. 2007)