利点:原料は水、産物は水素で、副産物は酸素
培養に必要な栄養塩類や CO2 が少なくて済み、環境に対して負荷の低い水素生産法
シアノバクテリア(別名:ラン色細菌、ラン藻類)は、高等植物や藻類と同様に、 光合成によって CO2 を同化して有機物 (グリコーゲンなど(下図で、(CH2O)と表記)を生産し、 酸素を発生します。中には窒素固定の酵素ニトロゲナーゼ(マメ科植物に共生する根粒菌のものと同様に、 窒素をアンモニアに還元することを本来の役割とする酵素です)を持つものがあり、 反応の副産物として必ず水素を発生します。 窒素ガスがない時は、水素の生産だけが起こります。 ニトロゲナーゼ反応に必要な電子は、有機物の分解により供給されます。
シアノバクテリアの生育に必要なものは栄養塩類(リン酸、カルシウム、マグネシウム、硫酸等)、CO2、N2、水です。 窒素固定ができるため、硝酸塩やアンモニウム塩などの窒素源を省くことができるので、コストが安く済みます。
また、細胞生育後は、細胞を収穫することなしに、長期間にわたり水素を生産し続けるので、栄養塩類やCO2のコストを低く抑えることが可能です。
細胞生長期から水素生産期への切り換えは、単に気相のN₂濃度を下げるだけで十分です。そして、培養液を変えることなく、数ヶ月にわたり水素生産/収穫ができます。
CO2 は、光合成で吸収されて有機物となり、ニトロゲナーゼ反応のために消費されて再び CO2 となりますので、 CO2 は細胞の生長と反応の維持には必要だが、水素生産時には全体としての消費はありません。
したがって、水が原料となって、水素と酸素が生じることになります。 水18gから水素が 22.4 L (標準状態)生産されるので、1 kg の水から生産される水素は約 1.24 m3(標準状態)で、 これはエネルギー(高位発熱量)にして約 15.9 MJ(約 4.4 kWh 原油約 0.33 L に相当)になります。
太陽光をエネルギー源とし、水 3 kg を原料として約 1 L の原油に相当する水素が生産され、反応の副産物は酸素です。
CO2は細胞の生育時には必要だが、循環的に使用され、水素生産時には消費されないので、省力化された生産が可能です。