最終更新日:2012年5月30日
【目標】
- 地球温暖化軽減のために、光合成微生物を利用して水素を洋上で大規模生産
- 将来、地球表面の1.5%に相当する海域(オーストラリア大陸の約85%に相当)を水素生産に利用することにより、人類の消費化石燃料の約50%を代替可能
シアノバクテリア(別名:ラン色細菌、藍藻類)の光合成を利用し、太陽光をエネルギー源とし、水素を一次エネルギーとして、 海面に浮遊させたバイオリアクター(生物生産容器:3層のプラスチップから構成される巨大バッグ)中で、 大規模生産することを提案し、その実現に必要な技術・研究開発を行っています。
将来の洋上での水素生産イメージ図
プラスチックバッグ内での水素生産概念図
巨大なプラスチックバックを数 10~数 100 km2規模で、洋上に浮かべ、水素を生産させ、母船(工船)上で、精製・圧縮してから目的港へ運ぶ。
シアノバクテリアを利用した水素生産は環境に対する負荷が低い
- 窒素固定が出来るシアノバクテリア(別名、ラン色細菌、藍藻 類)の、光合成とニトロゲナーゼを利用して水素生産を行います
- N2 が高濃度のとき細胞は増殖するが、増殖後にN2 濃度を下げることにより、増殖を停止して、長期(数ヶ月以上)にわたり、水素生産を行います
- 原料は水で、産物は水素と酸素です
- 増殖には、栄養塩類(リン酸塩等)が必要ですが、水素生産期に添加する必要はありません。自身で窒素固定を行うので、窒素栄養塩類を添加する必要がないことが特に有利な点です
- CO2 は循環的に利用されるので最初に加えるだけでよいです
- 不要になったシアノバクテリアは、魚の餌として利用が可能です
研究開発にあたって・・・
石油などの化石燃料の利用は、排出される CO2 の温室効果によって、 地球温暖化、海面上昇、一部地域での自然災害の激甚化などの深刻な環境問題の原因となっています。 そのため近年、化石燃料に代替できる再生可能でクリーンなエネルギー源として、光合成微生物が注目されています。
すでに当研究所では、光合成微生物であるシアノバクテリアを遺伝子工学的に改良し、 水素発生効率を世界最高水準(太陽光に対する効率1.7%相当)に高めることに成功しました。 この研究成果をもとに、光合成を利用したエネルギー生産の実現化に向けた技術開発を目指しています。